クナイ調について当塾の見解 できるくない、できたくない、は合ってるくない?
「くない」「たくない」の口語をクナイ調と名付けました。宮内庁は下げて読みますが、クナイ調は棒読みします。
考察: 現在様々なご意見を元に鋭意執筆中 この言葉の適応地域は不明
まず、元来日本語に「?」「・」や「!」記号は用いない。しかし、ライティングコミュニケーションツールの浸透によって意思表示のために使用されるようになった。今回も使用しなければ意を読み取れないと判断し用いている。「?」「!」は外来語である、と強調したい。当然、作文や小論文では用いない。
1「くない」が接続する品詞は2つ
・動詞の終止形
・過去を表す助動詞「た」
例1:動詞の終止形 例:できるくない?
例2:形容詞の連用形+「た」 例:おいしかったくない?
例3:動詞の連用形+「た」 例:できたくない?光ったくない?
例4:名詞+断定の助動詞連用形「だっ」+「た」 例:時間だったくない?
例5:形容動詞の連用形(~だっ)+「た」 例:キレイだったくない?
2補助の言葉「ている」を併用可能な動詞は語尾が「てる」を経由し「くない」が付加されることが多い
例1:合う→合っている→合ってる→合ってるくない?
例2:光る→光っている→光ってる→光ってるくない?
例3:似る→似ている→似てる→似てるくない?
例4:狂う→狂っている→狂ってる→狂ってるくない?
さらに過去を表し「たくない」の形も作る
例1’:合った→合っていた→合ってた→合ってたくない?
例2’:光った→光っていた→光ってた→光ってたくない?
例3’:似た→似ていた→似てた→似てたくない?
例4’:狂った→狂っていた→狂ってた→狂ってたくない?
3存在意義
・肯定をハッキリさせるはたらき
・言葉を婉曲*にするはたらき(*えんきょく:やわらげる)
・感情表現として若干の感情を含ませ相手に同意を求める
・千葉埼玉の方言「じゃん」に代わる新たな方言
・「じゃない」「んじゃないか」の転用
見解:
新しい方言です、で片付くことかもしれません。
まず、現大学生に乱用されている印象があります。家族内で下位層へ波及し、友人間で広がるイメージです。コミュニケーションツールや動画で発言が表れることもあり、徐々に浸透しているようです。
一方、絶えず変化する話し言葉ですから、コミュニケーションの上では問題ないと考えます。ただし、書き言葉ではないことから、ら抜き言葉と同様の扱いとなることは明らかです。無意識に発話したことの認識が必要です。
普段、この言葉を発言しない相手には使わないでください。Time, Place, OccasionつまりTPO=時と場合、に応じて賢く使い別けられれば、あなたの評価は高まるでしょう。
上司に向かって「出来るくないですか?」と言う部下は持ちたくありません。
「やっぱあの上司狂ってるくね?」と同僚同士が陰口を叩くのは問題ありますせん。
補足
婉曲にした肯定表現を「婉曲肯定」、婉曲にした否定表現を「婉曲否定」と定めます。
まとめると(*いずれ使われると推測)
出来る | 現在 | 過去 |
標準肯定 | できる | できた |
婉曲肯定 | できるくない | できたくない |
標準否定 | できない | できなかった |
婉曲否定 | できなくない | できなかったくない* |
下一段活用の例(可能動詞を含む)
遊べる | 現在 | 過去 |
標準肯定 | 遊べる | 遊べた |
婉曲肯定 | 遊べるくない | 遊べたくない |
標準否定 | 遊べない | 遊べなかった |
婉曲否定 | 遊べなくない | 遊べなかったくない* |
五段活用の例
遊ぶ | 現在 | 過去 |
標準肯定 | 遊ぶ | 遊んだ |
婉曲肯定 | 遊ぶくない* | 遊んだくない |
標準否定 | 遊ばない | 遊ばなかった |
婉曲否定 | 遊ばなくない | 遊ばなかったくない* |
上一段活用の例
見る | 現在 | 過去 |
標準肯定 | 見る | 見た |
婉曲肯定 | 見るくない | 見たくない→曖昧 |
標準否定 | 見ない | 見なかった |
婉曲否定 | 見なくない | 見なかったくない* |
サ変
する | 現在 | 過去 |
標準肯定 | する | した |
婉曲肯定 | するくない | したくない |
標準否定 | しない | しなかった |
婉曲否定 | しなくない | しなかったくない* |
・肯定をハッキリさせるはたらき
解けたね(確認)→「解けたくない?」
言ったよね(同意を求める)→「言ったくない?」例:昨日言ったくない?
飲んだよね(念押し)→「飲んだくない?」例:さっき飲んだくない?
「ない?」が否定以外に確認や同意を表す新助動詞と認知され「くない」に転じた。
否定の意味が外れて新たに疑問や提示へ転じたため、否定「ない」とは明確に区別する要素「くない」となっている。
・「じゃない」の転用例
解けたじゃない(確認)=「解けたくない?」
言ったじゃない(同意を求める)=「言ったくない?」例:昨日言ったくない?覚えてない。
飲んだじゃない(念押し)=「飲んだくない?」例:さっき飲んだくない?そうだった。
・「んじゃないか」の転用例
「解けたんじゃないか?」(疑問)→「解けたんじゃない?」→「解けたんくない?」→「解けたくない?」
「解けるんじゃないか?」(同意を求める)→「解けるんじゃない?」→「解けるんくない?」→「解けるくない?」
「じゃないか」はそもそも「~ではないか」に由来するため「ないか」が語源だと考えられる。
「できたくない?」は「できたんじゃない?」より語数が少ないという合理性を見出せる。執筆者は、聞かされ続けると発言してしまいそうな恐怖を感じる言葉である。
発生過程
・可能動詞の終止形から直接発生した
この意見は多い。可能動詞は五段活用の動詞からの転用で「れる」が付加され下一段活用化したもの。このタイプの終止形に「くない」を直接付加。
例:「行く」→「行ける」→「行けるくない?」
他の活用では、助動詞の「られる」を付加。ら抜き言葉はこのタイプに存在し、今回のクナイ調では「ら抜き言葉」で使う。
例「見る」→「見られる」→「見れる」→「見れるくない?」 (可能)
「見る」→「見るくない?」例:映画館行ったら普通映画見るくない?なに寝とる(ここまで来ると日本語の乱用以外にない)(同意を求める)
「食べる」→「食べられる」→「食べれる」→「食べれるくない?」例:もっと食べれるくない?(可能)
「食べる」→「食べるくない?」例:給食全部食べるくない?=給食だから全部たべるよね(同意を求める)
もともと下一段活用の場合、自然に付加される。例:「ばえるくない?」「出るくない?」
さらにすべての活用、つまり動詞であれば意味が破綻しない限り、付加されるようになった。どこから「くない」がやって来たのか言及されず、主に口調が生んだという意見が多い。
・形容詞+打ち消しの助動詞から可能動詞へ波及した
「この日本語は美しくない」の「美しくない」は形容詞の連用形「美しく」+打ち消しの助動詞「ない」が学校文法。
同じ発音で「美しくない?」と語尾を上げて疑問や念押しの肯定へ転じた。
さらに「くない?」を残して可能動詞へ波及。
「行けない?」は「行けなくない?」に転じ、肯定の意のまま「行けるくない?」へと繋がる。
くないの語源は形容詞にあると考えられる。
・なくない?から発生
「なくない?」に起因する。否定と肯定をはっきり区別しあいまいさを回避する。
否定側からの「ありえない」→「ありえなくない?」→「なくない?」
が根付いて「なくない?」が独立。その後「くない?」だけが独立。
肯定側からの「ありうる」→「ありえるくない?」→「くない?」
執筆者はこれが一番近いと考えている。「なくない?」「なくねー?」の単独発言を以前よりずっと耳にしてきたからだ。
一度言い切り、婉曲さの追加や疑問、念押しのために「くない?」を付加することも可能。「行く、よね?」=「行ける、くない?」はあるが、「行く、くない?」が成立するか確認中。語呂が非常に悪い。
「ありえるくない?」は「ありえるよね?」より字数が長い。この仮定の場合、総じて発話数が長くなるため、果たして市民権を得られるのか疑問である。せいぜい「よね?」が「くね?」に変化する程度で落ち着くのではないかと考える。